krm_notes #
概要とファイル形式 #
KRM_definitions.tsv
ファイルに詳細な注釈情報を追加したファイル krm_notes.tsv
を作成した。
これは、TSV形式とJSON形式で用意した。
2025年3月の仕様変更後のファイル名であることを明示的に示すため、
大文字の KRM ではなく小文字の krm を用いて
krm_notes.tsv
と krm_notes.json
という名称とした。
カラム名対照 #
Comparison with KRM_definitions.tsv (v1.1.55) #
krm_notes.tsv
を新とし、KRM_definitions.tsv
を旧として、両者のカラム名を対照すれば次のようになる。
New Column Name (krm_notes v1.2.6) | Old Column Name (KRM_definitions v1.1.55) |
---|---|
definition_seq_id | KRID_no |
kazama_location | KRID |
hanzi_entry | Entry |
definition_elements | Def |
definition_type_code | Def_code |
definition_type_name | Def_name |
remarks | Remarks |
KRM.tsv (v1.1.347) の内容の取り込み #
さらに KRM.tsv
の内容を krm_notes
に取り込むことにした。両者のカラム名を対照すれば次のようになる。
New Column Name (krm_notes v1.2.6) | Old Column Name (KRM v1.1.347) |
---|---|
entry_id | KRID_n |
tenri_location | KR_Tenri_p |
volume_name | KR_vol_name |
radical_name | KR_radical |
volume_radical_index | KR_vol_radical |
original_entry | Entry_original |
データ構造:ER図とJSONにおける実装 #
前述したように、
krm_notes
の内部は次のような入れ子構造となっている。
ER図においては、krm_notes
テーブルは krm_main
テーブルと entry_id
によって関連づけられた子テーブルとして表現されている。一方、実際の JSON データでは、この krm_notes
に相当する情報は平坦なテーブル構造ではなく、各 krm_main
オブジェクト内に "definitions"
というキーでまとめられた入れ子の配列として実装されている。
この "definitions"
配列には、以下のフィールドをもつ定義オブジェクトが複数格納されている:
- definition_seq_id
- definition_elements
- definition_type_code
- definition_type_name
- remarks
この構造は、ER図において次のように概念的に対応づけることができる。
krm_main
テーブルは、概念上複数の定義(notes)をもつ一対多の関係を形成している。
ただし、実際の JSON 実装では定義項目は別テーブルとして独立しておらず、krm_main
の各レコード内に "definitions"
というキーの下でまとめて入れ子構造で保持されている。
JSONデータ構造の例
{
"entry_id": "F00001",
...
"definitions": [
{
"definition_seq_id": "F00001_01",
"definition_elements": "音仁(LV)「ニン」",
"definition_type_code": 215,
"definition_type_name": "音注声点有_類音注等",
"remarks": "広韻「如鄰切」..."
},
...
]
}
各カラムの説明 #
次に、カラム名の内容を日本語で説明する。
New Column Name (v1.2.6) | Japanese Explanation |
---|---|
entry_id | Fで始まる5桁の数値からなる見出し項目ID。一部、追加した掲出項目にはb番号を付す。 |
definition_seq_id | 連番で与えられるFで始まる5桁の見出しの数値IDに加えて、見出しの下に記される注文の各要素を出現順に区分し、出現の順番に_01、_02のように追加したもの。見出しには_00を追加する。 |
kazama_location | K・巻数(2桁)・風間版頁数(3桁)・行数(1桁)、段数(1桁)、字順(1桁)を示すID。字順付与のルールの詳細は別に定める。 |
tenri_location | T・巻数(a/b/c)・天理版頁数(3桁)・行数(1桁)・段数(1桁)・字順(1桁)を示す。字順付与のルールの詳細は別に定める。 |
volume_name | 巻名。「仏上」「仏中」「仏下本」「仏下末」「法上」「法中」「法下」「僧上」「僧中」「僧下」の10 巻を示す。 |
radical_name | 部首名。「人、彳、辵」から「風、酉、雑」までの120部を示す。 |
volume_radical_index | 巻。v・巻数(1-10)#・部首番号(1-120)を示す。v1#1(第1帖第1)〜v10#120(第10帖第120)。第1帖(仏上)〜第10帖(僧下)。 |
hanzi_entry | 校訂漢字は原則、康熙字典体(Unicodeの新字体(通用字体・俗字体)を含む)を用いる。Unicodeに収録されていない漢字については、以下の方法で表現する。漢字の部品の組み合わせで表現可能な場合は、IDS(漢字構成記述文字列)で入力する。特定の漢字やその部品で、IDSまたは標準Unicodeで表現が困難な場合は、CHISEおよびGlyphWikiの実体参照方式に基づいた簡略表記(例:CDP-8C55, koseki-00001)を用いる。上記のいずれの方法でも表現できない文字や、原典で判読不能な文字(虫損等)は、「■」(黒い四角)で入力する。複数漢字の見出しは「/」(全角スラッシュ)で区切る。省略符号「|」は「ー」(長音符)で示し、全角括弧()内に該当字を付記する。 |
original_entry | 原字形に準拠した見出し字。誤字はそのまま。Unicode外の漢字の表現はhanzi_entryに準じる。原字形の掲出字が不要なら「〇」。 |
definition_elements | 注文の全文から、字体注、音注、意義注、和訓、その他の5種に区分し、それぞれの要素を一つずつ抜き出したもの。 |
definition_type_code | 注文の種類を分類した3桁の数値。 |
definition_type_name | 注文の種類を字体注、音注、意義注、和訓、その他の5種に区分して、そのいずれに該当するかを示したもの。 |
remarks | 編集者による追加の文脈や情報を提供する注記。 |
Compiler’s Remarks (remarks カラム) の内容と意義 #
この remarks
カラムに、データベース作成者による注釈(Compiler's Remarks
)が格納される点に注意してください。
remarks
カラムは、次の情報を提供している。
- 追加的な文脈 : 名義抄の記述を理解する上で助けとなるような、補足的な背景情報や関連情報。
- 学術的な考察 : 特定の記述に対する、文献学的、言語学的などの専門的観点からの考察や見解。先行研究の紹介を含む。
- 本文校勘の結果: 異本や関連資料との比較検討(校勘)を行った結果判明したことや、それに基づく本文解釈など。
- 出典調査: 名義抄の記述が、どのような文献を典拠としているかの調査結果や、その考察。先行研究での指摘も紹介。
そして、これらの注釈は、それぞれ名義抄の次のいずれかの特定の部分に関連付けられている。
- 特定の
definition_element
(注文の個別要素):krm_notes
ファイル内で個々の行として扱われる、名義抄の「注文」を構成する具体的な要素(たとえば、ある特定の字体注、音注、義注、和訓など)一つ一つ。 - または、
Headword
(掲出字): その項目全体の主題である掲出字そのもの。
つまり、この remarks
カラムは、名義抄の本文テキストだけでは読み取れない、より深い理解や研究に繋がるような、データベース作成者による専門的な付加情報を提供する役割を持っている。