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掲出字数の算出

掲出字数の算出 #

ここでは、誤字、脱字、衍字、補入、埋字、代用符号、踊り字などについて解説し、 掲出字数の算出を行う。掲出字数は、掲出字の延べの字数のことである。

そして、この掲出字数の算出の結果に基づき、掲出項目数の算出も行う。 掲出項目数は、単字の掲出字からなる項目、2字の掲出字からなる項目のように、掲出項目を 構成する字数ごとに集計する。

最後に、名義抄の120の部ごとに、掲出字数と掲出項目数を一覧する。 そこでは、酒井憲二が算出した掲出項目数と照合しながら、筆者らの算出との相違点 も解説する。

誤字 #

掲出字の誤字(Miswritten Character)の例をいくつかあげる。

用例は、krm_main.tsvから必要部分を抜き出したものに、 krm_notes.tsvremarksの内容を追加して示す。 また、参照の便宜を考えて、風間版の所在をkazama_locationとして示す。 K02008840は巻2(仏中)、8頁、8行、4段に出現することを示す(最後の1桁の数値の説明は略)。

最初は比較的単純な例である。

  • kazama_location: K02008840
  • hanzi_entry: 姡
  • original_entry: 活
  • definition: 今
  • remrks: 掲出字は誤写。高山寺本・蓮成院本・西念寺本「姡」に作るにより改める。

この例は、女部の掲出字であり、異本に女偏の「姡」に作ることから、観智院本に誤写があることは明白である。

次は、誤字かどうか判断に迷う例である。

  • kazama_location: K01045610
  • hanzi_entry: 迷
  • original_entry: 〇
  • definition: 俗悉字 私逸反
  • remrks: 掲出字は「悉」の異体字「⿺辶半」が変化した字形か。

この例の「迷」は注文に「俗悉字」とあり、「悉」の「俗」体とされている。 「迷」と「悉」とは別字であり、両者を結びつけるには誤写を想定する必要がある。 「悉」の下の「心」を「辶」のように書写することから生まれたと 推測される。「悉」の異体字と「迷」とが衝突した例である。

「悉」から「迷」までの変化の過程は次のように想定できる。

悉𢘻𭜧𨒃迷

GlyphWikiによれば、𨒃(𨒃 u28483) は[疑難字考釋與研究]に例がある。

脱字 #

掲出字の脱字(Omitted Characters)は、別に一覧したが、次に再掲する。 脱字であることが明らかな掲出字は、全角の角括弧の[]に入れて示す。

是/[以]
不/奈/[何]
将/為/[便]
嘻/[囉]
奢/[侈]
奚/[如]

注釈の一例を次に示す。

  • kazama_location: K0200663
  • hanzi_entry: 奚/[如]
  • original_entry: 〇/〇
  • definition: イカム(__L
  • remarks: 「如」脱字。蓮成院本「奚如」に作る。高山寺本「ー」を用いず「如」と記し、女部後半付近に記載。高山寺本が先行する例(岡田研究192頁)。

衍字 #

掲出字の衍字(Superfluous Characters)はほとんど認められない。

  • kazama_location: K0402481, hanzi_entry: ⿱赤廾, definition: サカユ シツカナリ
  • kazama_location: K0402482, hanzi_entry: 人, definition: (無), remarks: 衍字か。あるいは掲出字は「奕」の異体で、熟語「奕奕」の踊り字を誤写するか。「奕奕」は詩経に例あり。

「人」字が存在する理由は明確ではなく、衍字の疑いがある。

埋字(分註式) #

埋字(Embedded Characters)とは、ひとつの項目の中に繰り込まれた項目のことである。

  • kazama_location: K0201261, hanzi_entry: 娜, definition:乃可(H)反 マヽハヽ タヲヤカナリ 婀ー ヨキカホ ナマメク, remarks:「婀ー ヨキカホ ナマメク」は埋字項目か。

この埋字を項目相当のものとすることもできるし、注文中で熟語について解説したものとすることもできる。

熟字を単字に注の中に、埋め込む方式を「分註式」、埋め込まずに単字の掲出項目の次に 独立した掲出項目とする方式を「独立式」という(岡田希雄『類聚名義抄の研究』313頁以下)。

諸本の系統関係、前後関係を考察する上で重要な指標となるものであるが、ここではこれ以上触れない。

代用符号(|) #

前の項目と同一の掲出字が用いられる場合、それを代用して「丨」を用いる。このデータベースでは横書きの表示で見やすくするために「ー」を用い、その符号の後に、該当する掲出字を記載している。

代用符号(Substitution Marks)の「ー」は、ほとんどの場合、前の項目の掲出字を指すとして問題ないが、ごくまれに前の項目を飛ばしたところの項目の掲出字が入ることがあるので、注意が必要である。

次の例では、「ー」がかなり離れた掲出字を指している。

  • kazama_location: K01038411, hanzi_entry: 以/後, definition: ノチ
  • kazama_location: K01038420, hanzi_entry: 㣭, definition: 字公(L)反 數也
  • kazama_location: K01038430, hanzi_entry: 𢓈, definition: 音旬之去声 トヽム メクル アマネシ
  • kazama_location: K01038510, hanzi_entry: 徇, definition: 同 トナフ *アハネシ(L___) シタカフ(_HV) *イトナム
  • kazama_location: K01038530, hanzi_entry: 彴, definition: 止「已」約反 シタフ
  • kazama_location: K01038541, hanzi_entry: 已/ー, definition: 同
  • kazama_location: K01038611, hanzi_entry: 向/ー, definition: ユクサキ(HH__) ユクスヱ, remarks: 掲出字は「向後」とすべきを誤る。岡田研究193-194頁に「ー」使用は高山寺本が適切との指摘あり。

最後の二つの掲出字は、素直に考えれば「已/ー(彴)」と「向/ー(彴)」となるが、これでは意味が通じない。この箇所は岡田希雄が指摘したように、「向後」とすべきものである。その前の「已/ー」は「已/後」となるべきものである。 つまり、この箇所は、元来「以/後」「已/ー」「向/ー」の順に掲出されていたところに、 上に列記した項目の二番目のK01038420「㣭」から5番目のK01038530「彴」が挿入されたことが想定されるのである。

踊り字(〻) #

踊り字(Iteration Mark)は繰り返し符号などとも呼ばれる。漢字の踊り字は、現在、「々」を用いるが、このデータベースでは 「〻」を用いている。観智院本では、次の例のように、熟語項目の2字目以降に用いられる。

  • kazama_location: K01059441, hanzi_entry: ー(迢)/〻(迢), definition: トホノカナリ
  • kazama_location: K02021731, hanzi_entry: 曽/ー(祖)/〻(母), definition: オホオハ(LHLHV)
  • kazama_location: K06036711, hanzi_entry: 郁/〻(郁), definition: マタラカナリ(LLVHL__)

注文の文字を大字に書写 #

注文の文字が掲出字と同じ大きさの大字で書写されて、掲出字と紛れやすい例がある。

  • kazama_location: K02051210
  • hanzi_entry: 𠰍
  • definition: 音主 呼鷄
  • remarks: 高山寺本・蓮成院本ともに「呼鷄」を「ー〻呼鷄」に作る。観智院本は「呼鷄」を大字で書写。

口部の例である。観智院本は「呼鷄」を大字に書写するが、高山寺本・蓮成院本ともに「ー〻呼鷄」に作っており、注文の文字とすべき例である。

  • kazama_location: K06100620
  • hanzi_entry: 憙
  • definition:音喜(H-L) 又嬉 コノム(LLH) 喜「注也」 ネカフ ツクス ヨロコフ(LLH_) ヒロシ(LL_)
  • remarks: 注文「喜」は大字、「注也」はその左に朱筆。

この例は心部にあるが、「喜」が大字で書写され掲出字のように見える。しかし「喜」の左に「注也」とあって、「喜」が注文の文字であって、掲出字でないことを明示している。

掲出項目数 #

掲出項目数と掲出字数 #

観智院本『類聚名義抄』の掲出項目数は、池田証壽・劉冠偉・鄭門鎬・張馨方・李媛「観智院本『類聚名義抄』全文テキストデータベース―その構築方法と掲出項目数等の計量―」(『訓点語と訓点資料』144、2020)に掲載した。この論文には、掲出項目をその字数により分類し、その内訳も記載している。

No 1 1字 2字 3字 4字 5字 6字以上 項目数 字数
001 616 203 26 5 2 3 855 1,149

とあるのは、人部に1字(単字形式)の掲出項目が616あることを示す。 2字以上は複字形式であり、順に2字が203、3字が26、4字が5、5字が2、6字以上が3である ことを示す。項目数は855である。 6字以上の内訳は6字が2、7字が1である。 したがって、字数は次の計算式により、1,149と算出される。

(616 x 1) + (203 x 2) + (26 x 3) + (4 x 2) + (5 x 5) + (6 x 3) = 1,149

掲出項目数の点検 #

掲出項目数の点検は、酒井憲二 「類聚名義抄の字順と部首排列」(山田忠雄編『本邦辞書史論叢』三省堂、191–258頁、1967)に示された数値との相違する部首を中心に行った。 その結果、次の25部首に相違を見出した。差は池田ほか(2020)が酒井(1967)より少ないものを-1のように 示し、池田ほか(2020)が酒井(1967)より多いものを+1のように示す。 点検の結果、正しい掲出項目数と判断されたものを太字としている。 酒井(1967)と池田ほか(2020)の掲出項目数の いずれの数値も太字でない部首は、両者のカウントに差異がある場合でも、 今回の検証ではその正誤や差異の原因について結論に至らなかったことを意味する。

No 酒井 池田
001 856 855 -1
003 463 462 -1
014 1,034 1,035 +1
018 557 556 -1
020 718 717 -1
023 127 126 -1
027 166 165 -1
029 1,334 1,333 -1
039 512 513 +1
041 1,322 1,321 -1
044 494 493 -1
051 375 376 +1
052 384 383 -1
057 909 908 -1
066 34 33 -1
068 226 228 +2
075 400 399 -1
080 41 39 -2
087 214 213 -1
095 102 101 -1
111 532 533 +1
113 378 379 +1
114 665 664 -1
117 74 75 +1
120 1,500 1,501 +1

酒井(1967)と池田ほか(2020)とが同数であるが、 点検の結果、修正が必要となったのは次の部首である。

No 酒井・池田 池田修正
028 1,148 1,149 +1
086 104 103 -1

相違点の多くは、掲出項目の認定の仕方が 関わるものである。そこで、以下、 酒井(1967)に示された項目数との相違を具体的に説明し、 最後に修正した数値に基づいて部首毎の掲出項目数を一覧することにしよう。

仏上 #

仏上で酒井(1967)と池田ほか(2020)の数値に相違があるのは、次の2部首である。池田ほか(2020)の数値を示す。

No 1字 2字 3字 4字 5字 6字以上 項目数 字数
001 616 203 26 5 2 3 855 1,149
003 368 81 10 2 0 1 462 575

人部では、次の項目を2項目とすべきを誤って1項目としていた。

  • kazama_location: K01008341, hanzi_entry: 於/ー(何), definition: 同
  • kazama_location: K01008343, hanzi_entry: 奈/ー(何), definition: 同

国立国会図書館デジタルコレクションの該当ページ右で確認できる。

この他に脱字を補ったものが次の4項目である。

  • kazama_location: K01005131, hanzi_entry: 是/[以]
  • kazama_location: K01008421, hanzi_entry: 不/奈/[何]
  • kazama_location: K01031111, hanzi_entry: 将/為/[便]
  • kazama_location: K01035310, hanzi_entry: 奢/[侈]

池田ほか(2020)の数値は、次のように項目数を修正する必要がある。 修正した数値を太字で示す。

No 1字 2字 3字 4字 5字 6字以上 項目数 字数
001 614 205 28 4 2 3 856 1,153

辵部では、次の2項目が連続しており、1項目のように見えるが、 「迁」と「還」とは別字である。

  • kazama_location: K01050412, hanzi_entry: 迁
  • kazama_location: K01050420, hanzi_entry: 還, definition: 音環(L) カヘル-ス メクル マクラス シリソク マタ ヤム 又音旋 和外ン

「迂」「迃」「迁」と連続する箇所であり、類似した字形の掲出字を連続して配列 したものと考えられる。「迁」は無注の項目として扱うこととする。

国立国会図書館デジタルコレクションの該当ページ右で確認できる。

酒井(1967)と池田ほか(2020)との相違は、この箇所の算出の仕方によると推測される。

仏中 #

仏中で酒井(1967)と池田ほか(2020)の数値に相違があるのは、次の3部首である。池田ほか(2020)の数値を示す。

No 1字 2字 3字 4字 5字 6字以上 項目数 字数
014 858 146 17 9 4 1 1,035 1,274
018 450 96 7 2 1 0 556 676
020 580 119 12 2 1 3 717 888

口部で掲出項目の認定が問題となるのは、3箇所ある。

まず、次の「吉」と「喆」は連続して掲出されており、同一項のようにも見える。

  • kazama_location: K02047711, hanzi_entry: 吉
  • kazama_location: K02047712, hanzi_entry: 喆, definition: 知列反 サトル(HH_) アキラカナリ シル サカシ シム

しかし、「吉」(広韻「居質切」入声質韻、吉)と「喆」(広韻「陟列切」入声薛韻、哲)とは別字である。 「吉」は無注の例である。

国立国会図書館デジタルコレクションの該当ページ左を参照されたい。

次の「 ⿰口⿰木㬅」と「𠾺」は連続して掲出されており、同一項目のようにも見える。

  • kazama_location: K02056421, hanzi_entry: 㘄, definition: 魯登反
  • kazama_location: K02056422, hanzi_entry: ⿰口⿰木㬅
  • kazama_location: K02056430, hanzi_entry: 𠾺, definition: 俗善字

しかし、「⿰口⿰木㬅」は「㘄」に字形が類似しており、そのために掲出されたと推測される。 「⿰口⿰木㬅」は無注の例であろう。

国立国会図書館デジタルコレクションの該当ページ右を参照されたい。

次の項目は認定の仕方によって1項目とも2項目ともなる例である。

  • kazama_location: K02030211, hanzi_entry: 呴/吽/𤘘, definition: ◉呴吽𤘘「クチサキラ(HHHVHL)」 「或本ニハ已上五字カキツヽケタリ」
  • kazama_location: K02030221, hanzi_entry: 吼/㖃, definition: 五正 呼厚反 イヒキ ヨハフ ホユ(LH) ナク(HL) 和ク(L)

「呴/吽/𤘘」に「或本云々」の注があって、一見、次の「吼/㖃」 とは別の項目に見えるが、一つの項目とも判断できる。

池田ほか(2020)では標示の形式を重視して2項目とした。

国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 右を参照されたい。

仏下本 #

仏下本で酒井(1967)と池田ほか(2020)の数値に相違があるのは、次の4部首である。池田ほか(2020)の数値を示す。

No 1字 2字 3字 4字 5字 6字以上 項目数 字数
023 104 20 2 0 0 0 126 150
027 127 28 5 2 3 0 165 221
028 886 219 37 3 2 1 1,148 1,465
029 1,044 243 40 5 0 1 1,333 1,676

角部で掲出項目の認定が問題となるのは、次の箇所である。

  • kazama_location: K03012511, hanzi_entry: ⿳或或角/𧥑, definition: (無)
  • kazama_location: K03012520, hanzi_entry: 𧥑, definition: 音必 篳俗 羗人吹角
  • kazama_location: K03012530, hanzi_entry: 觱, definition:俗 クスヌク

環境によっては表示されないことがあるので、GlyphWikiを利用して説明しておく。

最初のK03012511の掲出字は、𧥑𧥑、 二番目のK03012520の掲出字は、𧥑 のような字形である。 これら3字は連続して掲出されるが、1字目と2字目との間にわずかに空白が認められる。2字目と3字目の空白は1字分あり 明確である。次にわずかな空白を_で示し、1字分の空白を__で示す。

𧥑_𧥑__𧥑

この三つの掲出字を、1項目、2項目、3項目のいずれで算出するかにより、掲出項目数は変わってくる。 池田ほか(2020)では、2番目の掲出字と3番目の掲出字の間に空白があり、無注となっていると判断して2項目と数えた。

国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 右を参照されたい。

ちなみに、観智院本のこの箇所は、龍龕手鏡巻4角部に極めて類似した項目が見えている。

  • location: Lb1690102, hanzi_entry: ⿳或旦角/⿳或或角, definition:二俗。
  • location: Lb1690104, hanzi_entry: ⿳咸咸角/𧥑, definition: 二古。
  • location: Lb1690106, hanzi_entry: 觱, definition: 今。音必。羗人吹角以驚与也。今作篳ー篥樂噐也。下又音佛。ー理也。五。

Lb1690104の掲出字は⿳咸咸角 𧥑となっている。

髟部で掲出項目の認定が問題となるのは、次の箇所である。

  • kazama_location: K03036311, hanzi_entry: ⿰镸及/■/⿰镸用/⿰镸少, definition: 未詳 「⿰镸⿱右王⿰镸宀圭〈私入〉」, remacks: 池田按:「⿰镸⿱右王⿰镸宀圭〈私入〉」は朱筆。埋字。ここでは項目として数えず。

「⿰镸⿱右王⿰镸宀圭〈私入〉」を1項目として数えるかどうかにより掲出項目数が変わる。 池田ほか(2020)では、この項目を髟部の掲出項目数に含めなかった。

国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 右を参照されたい。

手部で掲出項目の認定が問題となるのは、次の箇所である。

  • kazama_location: K03061721, hanzi_entry: ⿰扌水, definition: スクフ
  • kazama_location: K03061722, hanzi_entry: 捏, definition: 二奴結反 下又音張 舉也 刾也 又勅貞反

K03061722「捏」の注文の最初に「二」とあることから、データベースでは当初「⿰扌水」と「捏」とが 一体のものとしていたが、分けることにした。ただし、本文内容には不審の点が残る。 宝菩提院本の影印本の74頁に見える。

観智院本の該当箇所は、国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 左を参照されたい。

脱字を補ったのは次の2項目である。

  • kazama_location: K03039530, hanzi_entry: 将/[指]
  • kazama_location: K03047140, hanzi_entry: 磬/[控]

池田ほか(2020)の数値は、次のように修正される。 修正した数値を太字で示す。6字以上は8字のものが1例ある。

No 1字 2字 3字 4字 5字 6字以上 項目数 字数
028 886 220 37 3 2 2 1 1,149

木部で掲出項目の認定が問題となるのは、次の箇所である。

  • kazama_location: K03102341, hanzi_entry: 小/ー(櫃)/膳/ー(櫃), definition: アケノヒツ(HH___)

日国によると、「小櫃」は和名抄に例があり、「膳櫃」は延喜式に例がある。別項目とするのがよいので、 KRMのデータを次のように修正する。

  • kazama_location: K03102341, hanzi_entry: 小/ー(櫃), definition: (無)
  • kazama_location: K03102343, hanzi_entry: 膳/ー(櫃), definition: アケノヒツ(HH___)

国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 右を参照されたい。

その結果、木部の掲出項目数は酒井(1967)と同数となった。修正した数値を太字で示す。

No 1字 2字 3字 4字 5字 6字以上 項目数 字数
029 1,044 245 40 4 0 1 1,334 1,676

仏下末 #

仏下末で酒井(1967)と池田ほか(2020)の数値に相違があるのは、次の1部首である。池田ほか(2020)の数値を示す。

No 1字 2字 3字 4字 5字 6字以上 項目数 字数
039 407 91 11 1 1 2 513 648

火部の掲出項目数を酒井(1967)は512項目と数えているので、1項目の差がある。 項目数の数え方で問題となるのは、3箇所ある。酒井(1967)との差は、そのいずれかの 算出の違いによると考えられる。

  • kazama_location: K04038132, hanzi_entry: 𤊹, definition: (無)
  • kazama_location: K04038141, hanzi_entry: 㶿/⿰火⿳朩冖子/⿰火⿱十子, definition: 三俗勃字 音悖 サカリ

K04038132 の「𤊹」の後に若干の空白があり、池田ほか(2020)では無注の項目と数えた。

該当箇所の原文は国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 右を参照。

  • kazama_location: K04041732, hanzi_entry: 焭, definition: (無)
  • kazama_location: K04041741, hanzi_entry: ⿱⿱⿰火火冖凡/煢, definition: 俗通正 音瓊 ヒトリ 𠎽〈古〉 惸〈古〉 ヒトリアルヤモメ(HHL__HHH) ヤモメ(HHH)

K0404174の「⿱⿱⿰火火冖凡/煢」の注文の最初に「俗通正」とあり、全体として1項目であったとも考えられる。 しかし、K04041732の「焭」の空白スペースは明白であり、字体注記が前の項目を指す例もあることから、池田ほか(2020)では無注の項目と数えた。

該当箇所の原文は国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 左を参照。

  • kazama_location: K04052540, hanzi_entry: ⿱亦火, definition: 餘石反 盛也 カヽヤク ⿱赤火 ウレフ ユク 和ヤク, remarks: 「⿱赤火」は埋字とも、異体字注記とも見られる。

これは、備考欄の説明のとおりであるが、 「⿱赤火」はやや大きく書写されており、これを埋字と見れば1項目増加することとなる。 しかし、正宗漢字索引では 「⿱赤火」を採っていないので、注文中の異体字注記とした。

該当箇所の原文は国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 右を参照。

法上 #

法上で酒井(1967)と池田ほか(2020)の数値に相違があるのは、次の2部首である。池田ほか(2020)の数値を示す。

No 1字 2字 3字 4字 5字 6字以上 項目数 字数
041 1,137 149 27 4 0 4 1,321 1,564
044 418 62 9 2 1 1 493 589

水部で注意が必要なのは、「此クタリ二水ノトコロニアリ」と記す次の4項目である。

  • kazama_location: K05033810, hanzi_entry: ■, definition: 「此クタリ二水ノトコロニアリ」 フチ(LH) , definition: 直前に補入符号あり。この1行4項を冫部に移すべき指示。酒井字順33頁参照。
  • kazama_location: K05033820, hanzi_entry: 减, definition: 俗減字 オトス(LLH) ヘク(LHV) ヘス 和ケム
  • kazama_location: K05033830, hanzi_entry: 冸, definition: ソヽク
  • kazama_location: K05033840, hanzi_entry: ⿰冫⿰关⺉, definition: フカシ

この4項目は冫部に配属させて掲出項目数を算定している。

該当箇所の原文は国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 左を参照。

水部の掲出項目数を酒井(1967)は1,322項目、池田ほか(2020)は1,321項目と算定した。1項目の差がある。 点検したところ、算定に差の出る可能性のあるのは次の項目である。

  • kazama_location: K05001310, hanzi_entry: 水, definition: 尸癸反 ミツ(HHV) カハ 月ー(水) ツキノサハリ 和スイ(LH)

「月ー(水)」は熟語であり、これを埋字とみて項目に算入すれば、酒井(1967)と池田ほか(2020)の 数値は同数となる。しかし、次の注文「和スイ(LH)」は「水」に対するものであり、挟み込むかたちで 掲出項目を認定するのは躊躇される。 この項目は、池田ほか(2020)のまま1項目としておく。

該当箇所の原文は国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 左を参照。

足部の掲出項目数は、酒井(1967)が494項目、池田ほか(2020)が493項目で、1項目の差がある。この差に 該当しそうなのは次の項目である。

  • kazama_location: K05076311, hanzi_entry: 踟/ー(蹰), definition: 上馳(L) 又智音 或躊字 タチヤスラフ オソシ, remarks: 池田按:「躊字」は大字に作る。注文とみなす。

備考(remarks)として記したように「躊字」を1項目として算定することができるかもしれない。しかし「躊」は 次の項目として記載されている。

  • kazama_location: K05076330, hanzi_entry: 躊, definition:音儔 タチモトホル タチヤスラフ(LH____)

「躊」が重出したとするよりは、注文の文字を大字に書写したものとするのが穏当であろうと考える。

該当箇所の原文は国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 右を参照。

豆部では、次の項目に脱字を認める。

  • kazama_location: K05095640, hanzi_entry: 䴏/[豆], definition: ソヒマメ

これにより掲出項目数と掲出字数は次のように修正される。

No 1字 2字 3字 4字 5字 6字以上 項目数 字数
046 61 19 4 0 0 0 85 112

法中 #

法中で酒井(1967)と池田ほか(2020)の数値に相違があるのは、次の3部首である。池田ほか(2020)の数値を示す。

No 1字 2字 3字 4字 5字 6字以上 項目数 字数
051 308 57 5 3 0 3 376 472
052 294 76 8 1 3 1 383 496
057 730 161 13 1 2 1 908 1,111

石部の掲出項目数は、酒井(1967)が375項目、池田ほか(2020)が376項目で、1項目の差がある。この差に 該当しそうなのは次の項目である。

  • kazama_location: K06001320, hanzi_entry: ⿸𠂋帀, definition: 古 △在下

注文「△在下」の「△」がやや大きく書写されており、掲出字と誤認したものである。

脱字を補うのは次の項目である。

  • kazama_location: K06012741, hanzi_entry: 桃/花/[石], definition: 此間音タウクヱシヤク(LHHHLLL)

石部の掲出項目数と掲出字数次のように修正される。

No 1字 2字 3字 4字 5字 6字以上 項目数 字数
051 307 56 6 3 0 4 375 472

玉部の掲出項目数は、酒井(1967)が384項目、池田ほか(2020)が383項目で、1項目の差がある。この差に 該当しそうなのは次の項目である。

  • kazama_location: K06013430, hanzi_entry: 玊, definition: 音夙(T)「シク」 又栗(T)「リク」 又欣救反 琢「ミカク」玉を工也, remarks: 池田按:「栗」は「粟」の誤り。「玉」の朱点はヲコト点「を」か。「工也」は小字に作るが、広韻に「琢玉工」の義注があり、大字に翻刻した。

「琢「ミカク」玉を」とした「琢玉」を埋字とする余地がある。しかし、「琢」は別に掲載されており、 注文の一部としてよいだろう。

該当箇所の原文は国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 左を参照。

心部の掲出項目数は、酒井(1967)が909項目、池田ほか(2020)が908項目で、1項目の差がある。この差に 該当しそうなのは次の項目である。

  • kazama_location: K06084521, hanzi_entry: 㥶, definition: 「注」⿺⻎偘古 「注」⿱保言𠐨〈籀〉, remarks: 池田按:「⿺⻎偘古」と「⿱保言𠐨」は大字だが、それぞれ「注」があり、注文であることを示す。

「⿺⻎偘古」と「⿱保言𠐨」は大字なので、掲出字と数える可能性がある。しかし、心部に配属される 文字ではないし、「注」とも記されているので、数え違いは想定しにくい。

該当箇所の原文は国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 右を参照。

糸部では、酒井(1967)と池田ほか(2020)とで掲出項目数に差がないが、次の項目の文字数を修正する。

  • kazama_location: K06121611, hanzi_entry: 罘/䋄, definition: ノアミ

掲出項目を「四/不/䋄」と誤認していたのを修正した。 これにより掲出項目数と掲出字数は次のように修正される。

No 1字 2字 3字 4字 5字 6字以上 項目数 字数
059 631 94 8 3 0 0 736 855

法下 #

法下で酒井(1967)と池田ほか(2020)の数値に相違があるのは、次の4部首である。池田ほか(2020)の数値を示す。

No 1字 2字 3字 4字 5字 6字以上 項目数 字数
066 29 4 0 0 0 0 33 37
068 177 43 6 1 1 0 228 290
075 234 138 23 1 1 2 399 603
080 18 21 0 0 0 0 39 60

勹部は、次の箇所が問題となる。

  • kazama_location: K07057620, hanzi_entry: 匑, definition: 音⿺麦羽 又穹 ー𠤂 謹敬皃, remarks: 池田按:「ー𠤂」はやや大きく書写するが、注の一部とする。
  • kazama_location: K07057640, hanzi_entry: 𠤂, definition: 音躬

K0705762の「匑」の注文に見える 「ー𠤂」の「ー」は代用符号なので、「匑𠤂」となり、その字義を「謹敬皃」とするものである。 正宗漢字索引では「ー(匑)𠤂」を項目として採っている。

「匑」は広韻に「謹敬之皃。又音穹。」(平声東韻、弓:居戎切)、「謹敬之皃」(平声東韻、穹:去宫切)とある。 音注の「音⿺麦羽」は不審であるが、「又穹」とあるのは、平声東韻の音を指すと見ることができる。また、 「匑」は万象名義に「丘陸反。謹敬皃」、宋本玉篇に「丘六切。又丘弓切。匑𠤊謹敬皃」とあり、 「丘陸反」「丘六切」は入声屋韻渓母であるから、広韻で「驅匊切」とする「麴󠄀」を誤写したものであろう。

次項K07057640の「𠤂」には「音躬」とある。「𠤂」は広韻にないが、音注の「躬」は広韻「居戎切」(平声東韻、弓)であり、 「匑」と同音である。「𠤂」は万象名義、宋本玉篇、広韻に見えないが、 集韻「𠤂匔」に「謹敬也或作匔」(平声東韻、窮:渠弓切)と見えている。

以上からすれば、観智院本の「ー(匑)𠤂」は熟語とは考え難く、異体字を併記した可能性がある。

該当箇所の原文は国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 左を参照。

雨部の掲出項目数は、酒井(1967)が226項目、池田ほか(2020)が228項目で、2項目の差がある。 掲出項目の認定が問題となる箇所は次の例がある。

  • kazama_location: K07067330, hanzi_entry: 霆, definition: 定(R)亭(L)挺(H)三音 霹靂 イナヒカリ(__LVHL) イカツチ(H_HV_), remarks: 池田按:「霹靂」は義注。

「霹靂」はやや大きく書写されている。またこの項目は2マス(2格)分のスペースを占めるが、 「霹靂 イナヒカリ(__LVHL)」は2マス目に記されており、掲出項目であった可能性がある。 しかし「霹靂」は別の箇所に掲出されており、内容的にも注文中の字句とみて差し支えないと 判断した。

該当箇所の原文は国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 左を参照。

もうひとつは次の例である。関連する前後の項目もあわせて示す。

  • kazama_location: K07068530, hanzi_entry: 雹, definition: 歩角反 アラレ(HHH) 和ハク ハウ
  • kazama_location: K07068541, hanzi_entry: 𩅟, definition: 或
  • kazama_location: K07068542, hanzi_entry: 雹, definition: (無)
  • kazama_location: K07068611, hanzi_entry: 𩂁/䨔/⿱𩅒田, definition: 俗

3番目のK07068542「雹」はこの行の末尾にあり、次の行のK07068611「𩂁/䨔/𩅒」 に連続しているようにも見える。K07068542「雹」の下には若干の空白がある。 また、最初のK07068530と三番目のK07068542の掲出字は同じく「雹」と翻刻したが、 原文では後者の下部分は⿱冖巳のように書写されており、何らかの字体注を書き込む スペースを確保するために空白としたと考えられる。

ただし、例示の最後のK07068611「𩂁/䨔/⿱𩅒田」は、次の龍龕手鑑・巻2雨部の説明のように 「雹」の異体字であるから、K07068542「雹」とK07068611「𩂁/䨔/⿱𩅒田」で ひとつの項目であったとも考えられる。

  • location: Ls52b0802, hanzi_entry: 䨔𩂁𩅒, definition: 三俗。
  • location: Ls52b0805, hanzi_entry: 𩄉𩅟𩇌, definition: 三古。
  • location: Ls52b0808, hanzi_entry: 雹, definition: 正。蒲各反。雨冰也。七。

観智院本の掲出字と龍龕手鑑の掲出字とを対照して示すと次のようになる。 字体注のみ示し、音注、和訓は略す。/は改行を示す。算用数字は観智院本の出現順の番号で、観智院本に見えない文字はx、類似する文字は()を付す。

(観智院本) 1雹…… 2𩅟或 3雹  / 4𩂁 5䨔 6⿱𩅒田

(龍龕手鑑) 5䨔 4𩂁 (6)𩅒三俗 x𩄉 2𩅟 x𩇌三古 1雹正 …

観智院本は6文字、龍龕手鑑は7文字であるが、記載の順序は一致しない。 xを付した𩄉𩇌は観智院本に見えない。 観智院本の3雹 と6⿱𩅒田は 龍龕手鑑に見えない。 ただし、 観智院本の6⿱𩅒田は 龍龕手鑑の(6)𩅒に類似している。

改編本類聚名義抄の撰者が参照した龍龕手鑑のような字書の本文には不審の点があったのであろうと推測される。

観智院本の該当箇所の原文は国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 右を参照。

龍龕手鑑の該当箇所の原文は国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ右を参照。

疒部の掲出項目数は、酒井(1967)が400項目、池田ほか(2020)が399項目で、1項目の差がある。 掲出項目の認定が問題となるのは次の箇所である。

  • kazama_location: K07125841, hanzi_entry: 𤻿/⿸疒既, definition: 俗通 古界反 ⿱⿰白旡月 正䐴 𦝫, remarks: 池田按:⿱⿰白旡月は注文を大字に書写の例。

「⿱⿰白旡月」は大字で書写され掲出字のようにも見えるが、「疒」を構成要素に含んでおらず、 疒部の掲出字とするのは適切でない。

観智院本の該当箇所の原文は国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 右上を参照。

寸部の掲出項目数は、酒井(1967)が41項目、池田ほか(2020)が39項目で、2項目の差がある。 これは次の箇所が問題になると考えられる。

  • kazama_location: K07143741, hanzi_entry: 戈/ー(射), definition: イツル 六ー ムツマシ 賭ー ノリユミ

注にみえる「六ー(射)」と「賭ー(射)」とはいくぶん大きく書写されており、 次の和訓とセットにして独立の項目とするのがよいであろう。埋字、分註式の熟語である。 そうするとこの箇所は次のように修正される。

  • kazama_location: K07143741, hanzi_entry: 戈/ー(射), definition: イツル, remarks: 池田按:「六ー ムツマシ 賭ー ノリユミ」とあるは埋字であろう。
  • kazama_location: K07143743, hanzi_entry: 六/ー(射), definition: ムツマシ
  • kazama_location: K07143745, hanzi_entry: 賭/ー(射), definition: ノリユミ

寸部の池田ほか(2020)の数値は、次のように項目数を修正する必要がある。 修正した数値を太字で示す。

No 1字 2字 3字 4字 5字 6字以上 項目数 字数
080 18 23 0 0 0 0 41 64

示部では、酒井(1967)と池田ほか(2020)とで掲出項目数に差がないが、次の項目に脱字を認める。

  • kazama_location: K0700183, hanzi_entry: 樹/[神], definition: コタマ(LHL)

これにより掲出項目数と掲出字数は次のように修正される。

No 1字 2字 3字 4字 5字 6字以上 項目数 字数
061 198 27 6 0 1 0 232 275

僧上 #

僧上で酒井(1967)と池田ほか(2020)の数値に相違があるのは、次の2部首である。池田ほか(2020)の数値を示す。

No 1字 2字 3字 4字 5字 6字以上 項目数 字数
086 60 30 9 3 0 2 104 173
087 120 73 17 1 0 2 213 333

毛部の掲出項目数は、酒井(1967)が104項目、池田ほか(2020)が103項目で、1項目の差がある。 これは次の箇所が問題になると考えられる。

  • kazama_location: K0810064, hanzi_entry: ⿱三毛/⿱介毳/毳/𣯝, definition: マコケ(HHLV) カモ(HH) 音脆(R)「セイ」, remarks: 和訓は毳の傍訓のように記載。⿱三毛/⿱介毳/毳/𣯝で一項目に修正。

備考(remarks)として記したように、二つの和訓は「毳」の傍訓のように記されている。しかも「毳」の後は 改行となり次行冒頭に「𣯝」が掲出される。

「𣯝」は環境により表示されないので、GlyphWikiで示すと次のようになる。 改行を/で示す。

⿱三毛 ⿱介毳 毳 マコケ(HHLV) カモ(HH) / 𣯝 音脆(R)「セイ」

「毳」は広韻「此芮切」(去声祭韻清母)と「楚税切」(去声祭韻穿二母、㯔)の二音あり、 「脆」は「此芮切」である。「毳」は説文・毳部に「獸細毛也。从三毛。凡毳之屬皆从毳。」とあり、 この4字をひとまとまりとして基本項目とするのがよいと考えられる。蓮成院本もこの4字で 1項目としている。

「カモ」は日国「かも 【氈】」の項に「獣毛で織った敷物。また、毛製品一般をいう。おりかも。」とあり、新撰字鏡、和名抄に例がある。「マコゲ」は日国に掲載がない。 正宗仮名索引は「マコゲ」で採録するが、望月和訓集成と草川和訓集成は「ニコゲ」で立項し、ママを付す。 前田本色葉字類抄の「毳」に「ニコゲ(HHLV)」が見える。 「ニコゲ」は日国「鳥獣の毛のうち、細く柔らかく短い毛。また、人の柔らかな毛髪。うぶげ。わたげ。」とあり、和名抄等に例がある。

観智院本の該当箇所の原文は国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 右を参照。

ちなみに、龍龕手鏡巻1毛部には次のように見えている。

● 𣯝 𣯠 ⿱亦毳 四俗。 毳 正。七稅昌稅二反。鳥獸細茸毛也。又斷也。亦姓五。

毛部の掲出項目数と掲出字数は次のように修正される。

No 1字 2字 3字 4字 5字 6字以上 項目数 字数
086 59 30 9 1 0 0 103 173

食部の掲出項目数は、酒井(1967)が214項目、池田ほか(2020)が213項目で、1項目の差がある。 これは次の箇所が問題になると考えられる。

  • kazama_location: K08104831, hanzi_entry: 餬/𩚩, definition: 「カユ」 「モラフ(HHL)」 今正 音胡 鬻〈正〉 饘也 モラフ(HHL) ネヤス(LH_) ヒサク(HH_), remarks: 和名抄に「未詳」とあるが名義抄にない例、箋注本四ノ四八オ(岡田研究97頁)。

「カユ」「モラフ(HHL)」は掲出字「餬」の右下と左下に記載されており、独立した項目と見れなくもない。 しかし、「餬/𩚩」は異体字を併記した例であり注にも「今正』と見えるし、蓮成院本は「餬/𩚩」は1項目となっている。

もうひとつは次の例がある。

  • kazama_location: K08110441, hanzi_entry: 䬭/𩚓/𩚾/𩜻/䬢/⿱⿰号丙食, definition: 俗

難字が多いので、GlyphWikiで表示してみる。/は改行を示す。

𩞂 饕 或正叨通 他刀反 貪財 呉刀(R) 䬭 𩚓 𩚾 𩜻/ 䬢 ⿱⿰号丙食

𩜻䬢との 間に改行があり、ここで項目を二つに分けたとも考えられる。しかし、「饕」の異体字が連続する 箇所であり、1項目とするのが妥当であろう。

観智院本の該当箇所の原文は国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 右を参照。

僧中 #

僧中で酒井(1967)と池田ほか(2020)の数値に相違があるのは、次の2部首である。池田ほか(2020)の数値を示す。

No 1字 2字 3字 4字 5字 6字以上 項目数 字数
095 61 32 7 1 0 0 101 150
111 307 184 35 6 1 0 533 809

弓部の掲出項目数は、酒井(1967)が102項目、池田ほか(2020)が101項目で、1項目の差がある。 これは次の箇所が問題になると考えられる。

  • kazama_location: K09028141, hanzi_entry: ⿰弓取/⿰弓亥/⿰弓丁/⿰弓𧴪, definition: 未詳

「⿰弓丁」と「⿰弓𧴪」の間に改行があり、2項目と数える可能性がある。

⿰弓取 ⿰弓亥 ⿰弓丁/ ⿰弓𧴪 未詳

観智院本の該当箇所の原文は国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 右を参照。

鳥部の掲出項目数は、酒井(1967)が532項目、池田ほか(2020)が533項目で、1項目の差がある。 いまのところ、掲出項目数の算定で問題となりそうな箇所を見出していない。

僧下 #

僧下で酒井(1967)と池田ほか(2020)の数値に相違があるのは、次の3部首である。池田ほか(2020)の数値を示す。

No 1字 2字 3字 4字 5字 6字以上 項目数 字数
113 232 104 41 2 0 0 379 571
114 365 257 27 9 1 5 664 1,041
117 51 18 1 2 1 2 75 121
120 1,076 331 73 14 4 3 1,501 2,056

魚部の掲出項目数は、酒井(1967)が378項目、池田ほか(2020)が379項目で、1項目の差がある。 これは次の箇所が問題になると考えられる。

  • kazama_location: K10008640, hanzi_entry: 鰐, definition: 音萼 ワニ(LL)
  • kazama_location: K10008711, hanzi_entry: 鱷, definition: 或
  • kazama_location: K10008712, hanzi_entry: 𩻙, definition: 正
  • kazama_location: K10008713, hanzi_entry: 鰐, definition: (無)
  • kazama_location: K10008720, hanzi_entry: 䱟, definition: *フナ

観智院本の原文では最後の2文字(「鰐」と「䱟」)を1項目のように書写している。 蓮成院本にこの2文字の掲出はない。

1鰐音萼 ワニ(LL) 2鱷或 3𩻙正 4鰐 5䱟 フナ

確かに 4鰐 5䱟の2文字に 和訓「フナ」を注記したとも考えられる。

あるいは、改編本のある段階において、 1鰐と 4鰐に 字形の差があり、それを区別しようとして掲出しておいたとも考えられる。 2鱷 3𩻙 4鰐 の3文字は1マスに書写されている。 「鰐」は「ワニ」が常用訓であり、これを「フナ」と読むのは躊躇される。「フナ」は「䱟」のみに 対応するものと見ておきたい。

観智院本の該当箇所の原文は国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 右を参照。

虫部の掲出項目数は、酒井(1967)が665項目、池田ほか(2020)が664項目で、1項目の差がある。 これは次の箇所が問題になると考えられる。

  • kazama_location: K10030731, hanzi_entry: ⿱⿱⿰虫虫冖虫/⿱⿱⿰虫虫冖磊/𧖁/⿱⿱市冖蟲/⿱⿱士宀蟲/⿱兩⿰虫虫(改行)/⿰虫⿰杀攵, definition: 俗⿳⿻十口冖各俗

異体字を列記した項目であるが、途中に改行が入っている。

観智院本の該当箇所の原文は国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 右を参照。

もうひとつは次の箇所である。

  • kazama_location: K10038541, hanzi_entry: ⿱䖝⿰蚕蚕/⿱⿰天天蟲/䗝(改行)/⿱冖虫/蝅/⿱玄虫, definition: 俗

「蠶」の異体字を列記した項目であるが、途中に改行が入っている。

観智院本の該当箇所の原文は国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 右を参照。

鬼部の掲出項目数は、酒井(1967)が74項目、池田ほか(2020)が75項目で、1項目の差がある。 これは次の箇所が問題になると考えられる。

  • kazama_location: K10048541, hanzi_entry: 𩲀/𩱿/⿱勿鬼(改行)/𩲢/𩲑/𩲝/䰨/𩴎, definition: 俗

異体字を列記した項目であるが、途中に改行が入っている。

  • kazama_location: K10050340, hanzi_entry: ⿰我鬼, definition: (無), remarks:池田按:次の「未詳」項目に連続するか。
  • kazama_location: K10050411, hanzi_entry: 𩴜/⿺鬼有/⿺鬼麦/⿺鬼同/⿺鬼達/⿺鬼田/⿺鬼能/⿺鬼幸/⿺鬼𦍬/⿰田鬼, definition: 未詳

これは2項目と数えたが、K1005034「⿰我鬼」が次の「未詳」項目に連続するなら、1項目減となる。

観智院本の該当箇所の原文は国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 右と 該当ページ 右を参照。

雑部の掲出項目数は、酒井(1967)が1,500項目、池田ほか(2020)が1,501項目で、1項目の差がある。 これは次の箇所が問題になると考えられる。

  • kazama_location: K10081830, hanzi_entry: ■, definition: ツミ
  • kazama_location: K10081840, hanzi_entry: 𡿨, definition: (無), remarks: 「甽」の異体字。

■としたのは、鰐 のように書写している。 K10081840 「𡿨」は風間書房版に見えない。貴重図書複製会、新旧の天理版には 確認できるが、見落としやすい例である。

観智院本の該当箇所の原文は国立国会図書館デジタルコレクションの 該当ページ 左を参照。

雑部では、次の項目のデータに誤りがあった。

  • kazama_location: K10075411, hanzi_entry: 多/少, definition: ソコハク(LHLVL)

掲出項目を「多」のみとしていたのを修正した。

これにより掲出項目数と掲出字数は次のように修正される。

No 1字 2字 3字 4字 5字 6字以上 項目数 字数
120 1,075 332 73 14 4 4 1,501 2,057

部首毎の掲出項目数と掲出字数のまとめ #

池田ほか(2020)の掲出項目数を修正する必要があるのは、1人部、29木部、80寸部の3部首であった。 これ以外は、認定の仕方により数値が変動するもので、池田ほか(2020)のままとしておく。 以上の点検による修正を反映させて、以下にすべての部首の掲出項目数を一覧する。 掲出字数は明白な脱字を補った数値としている。

No 1字 2字 3字 4字 5字 6字以上 項目数 字数
仏上
001 614 205 28 4 2 3 856 1,153
002 144 38 3 0 0 0 185 229
003 368 81 10 2 0 1 462 575
004 48 5 2 0 0 0 55 64
005 162 16 1 1 0 0 180 201
006 72 12 1 3 1 0 89 116
007 65 65 3 2 0 0 135 212
008 46 20 2 1 0 0 69 96
009 58 21 2 0 0 0 81 106
010 73 6 1 0 0 0 80 88
仏中
011 114 12 2 1 1 0 130 153
012 421 94 8 3 1 0 527 650
013 26 5 2 1 1 0 35 51
014 857 147 17 9 4 2 1,036 1,275
015 399 55 4 2 0 3 463 552
016 30 6 1 0 0 0 37 45
017 117 10 0 0 0 0 127 137
018 450 96 7 2 1 0 556 676
019 129 29 2 0 0 0 160 193
020 580 119 12 2 1 3 717 888
仏下本
021 86 16 1 1 0 0 104 125
022 96 18 3 0 0 0 117 141
023 104 20 2 0 0 0 126 150
024 187 23 4 0 0 1 215 251
025 230 54 2 0 0 1 287 352
026 22 2 2 0 0 0 26 32
027 127 28 5 2 3 0 165 221
028 886 220 37 3 2 1 1,149 1,467
029 1,044 243 40 6 0 1 1,334 1,680
030 245 53 4 3 0 0 305 375
仏下末
031 156 20 2 0 0 0 178 202
032 56 9 0 0 0 0 65 74
033 116 14 0 0 0 0 130 144
034 22 10 0 0 0 0 32 42
035 156 52 10 3 0 0 221 302
036 𠬞 90 16 1 0 0 0 107 125
037 77 26 1 5 0 0 109 152
038 119 19 3 0 0 0 141 166
039 407 91 11 1 1 2 513 648
040 88 7 0 0 0 1 96 108
法上
041 1,137 149 27 4 0 4 1,321 1,564
042 75 7 3 0 0 0 85 98
043 615 74 9 0 1 0 699 795
044 418 62 9 2 1 1 493 589
045 79 17 0 0 0 0 96 113
046 62 19 4 0 0 0 85 112
047 97 26 1 0 0 0 124 152
048 47 6 1 0 0 0 54 62
049 94 18 2 1 1 2 118 157
050 430 59 5 1 1 1 497 584
法中
051 307 56 6 3 0 4 376 472
052 294 76 8 1 3 1 383 496
053 23 7 0 0 0 0 30 37
054 306 13 5 3 0 0 327 359
055 235 40 3 0 1 0 279 329
056 496 77 5 4 1 2 585 700
057 730 161 13 1 2 1 908 1,111
058 212 42 7 0 0 0 261 317
059 631 94 8 3 0 0 736 855
060 389 56 6 0 0 0 451 519
法下
061 198 27 6 0 1 0 232 275
062 454 53 5 3 0 1 516 593
063 194 42 9 1 1 1 248 321
064 79 39 4 0 0 0 122 169
065 215 81 10 0 0 1 307 415
066 29 4 0 0 0 0 33 37
067 162 27 2 0 0 0 191 222
068 177 43 6 1 1 0 228 290
069 208 40 3 0 0 1 252 306
070 67 18 1 0 0 0 86 106
071 149 34 7 2 0 2 194 260
072 67 14 7 1 0 1 90 127
073 广 233 59 12 0 1 0 305 392
074 鹿 33 18 6 1 0 0 58 91
075 234 138 23 1 1 2 399 603
076 121 59 9 0 0 0 189 266
077 44 26 24 0 0 0 94 168
078 22 9 0 0 0 0 31 40
079 17 6 0 0 0 0 23 29
080 18 23 0 0 0 0 41 64
僧上
081 986 513 95 10 4 1 1,609 2,363
082 300 159 30 1 2 0 492 722
083 73 30 2 0 0 0 105 139
084 151 79 9 1 0 0 240 340
085 68 30 5 1 0 0 104 147
086 59 30 8 4 0 2 103 173
087 120 73 17 1 0 2 213 333
088 469 186 19 6 0 0 680 922
僧中
089 49 31 0 1 0 0 81 115
090 34 18 1 0 1 0 54 78
091 73 39 8 1 0 1 122 188
092 73 37 4 1 0 0 115 163
093 73 39 7 1 0 0 120 176
094 35 6 0 0 0 0 41 47
095 61 32 7 1 0 0 101 150
096 54 18 1 0 0 0 73 93
097 30 6 1 0 0 0 37 45
098 48 10 0 1 0 0 59 72
099 25 14 0 0 0 0 39 53
100 93 31 2 2 0 1 129 175
101 87 32 3 1 0 0 123 164
102 50 30 5 0 0 0 85 125
103 157 58 8 2 0 0 225 305
104 62 15 4 0 0 0 81 104
105 54 32 2 0 0 1 89 130
106 134 70 14 0 1 1 220 328
107 34 19 1 0 0 0 54 75
108 147 74 8 4 0 0 233 335
109 47 25 6 1 0 0 79 119
110 188 87 14 1 1 1 292 419
111 307 184 35 6 1 0 533 809
112 59 32 2 0 0 0 93 129
僧下
113 232 104 41 2 0 0 379 571
114 365 257 27 9 1 5 664 1,041
115 34 20 6 1 0 0 61 96
116 23 13 4 0 0 0 40 61
117 51 18 1 2 1 2 75 121
118 70 32 6 2 0 0 110 160
119 146 53 9 0 0 1 209 289
120 1,075 332 73 14 4 3 1,501 2,057
全体
1字 2字 3字 4字 5字 6字以上 項目数 字数
合計 24,681 6,670 977 167 50 65 32,610 42,344

追記 #

K10108221陟厘について。

原文「⿱陟厘」一字に作り、正宗索引・草川和訓集成、これに従う。 望月和訓集成、「陟厘」二字とする。 道円本和名抄(巻17菜蔬部)「陟𨤲」に「音緾一本作厘和名阿乎乃利」とあり。 新撰字鏡「陟釐 青乃利」(臨時雑要字)、 色葉字類抄「陟𨤲 アヲノリ」(ア・植物)と見える。 観智院本は「陟厘」二字と判読するのがよいであろう。 掲出字数の計算に影響あるが、上記のデータには反映していない。 2022年12月15日記す。

2024年3月14日 集計の数値の誤りを修正。


  1. この表を含めて、以下に示す表では、「部」(Radical)を用いているが、これは筆者(池田)が書いた論文や著作で「篇」としていたのを改めたものである。 ↩︎